2016/07/31

博物館実習報告②

実践女子大学・文学部美学美術史学科4年の清水ひろみです。将来、学芸員になる為に、戸栗美術館で6日間、実習を受けさせて頂きました。
 戸栗美術館では、「古伊万里唐草―暮らしのうつわ―展」を開催しています。唐草文様が描かれた作品を中心に、暮らしと関連する作品も展示しています。今回は、第3展示室「磁器生誕から100年の変遷」より、私が、特に印象に残った作品である「色絵 竹虎牡丹文 皿」について紹介したいと思います。
伊-508①
この作品は、江戸時代、17世紀後半の作だと推定されています。伊万里焼の中でも、柿右衛門様式の作品です。乳白色の濁手(にごしで)素地の口縁に縁銹(ふちさび)が施されています。画面には、竹虎と牡丹という柿右衛門様式の定番の文様を組み合わせ、意匠化された牡丹花と縞模様が多いデフォルメされた虎が描かれています。
 柿右衛門様式は、余白の多い構図、赤色を多用した絵付けという2つの特徴があります。これらの特徴を本作品で見ていきましょう。
 まず初めに、構図についてです。全体的にモチーフが小さく描かれており、余白を多く作っています。本作品を見てみると、画面左に、右上を見上げる虎がいます⑴。その視線の先には、画面右上で左向きに咲く大輪の牡丹花があります⑵。その牡丹の枝に沿って降りていくと、左上に向かって、黒い垣根で咲く花に目がいきます⑶。そして、咲いている方向である左上に沿って視線を移動させると、竹からスッと伸びて咲く花へ辿り着くようになっています⑷。こうした一連の流れを作ることで、一見バラバラに見える文様に、何か関連性があるのではないかと感じさせます。
伊-508④
伊-508① - コピー
伊-508① - コピー (2)
伊-508① - コピー (3)
次に、絵付けについてです。本作品は、釉薬の上から絵付けを施す「上絵付け」を用いており、発色から水彩画のようなみずみずしさが感じられます。それは、全体的な上絵付けからも感じられますが、特に、青色で上絵付けされている竹の色から感じられます⑸。まるで、グラデーションのように濃い部分と薄い部分があり、竹の青々しさも伝わってくるようです。また、柿右衛門様式は、絵付けの中でも、赤色を多用しています。本作品では、牡丹花だけでなく、垣根にも施されており、みずみずしさの中にも、華やかさが演出されています。
伊-508① - コピー (5)
 ちなみに、柿右衛門様式は、主に、海外へ輸出する観賞用の製品として製作されました。本作品の裏面に着目すると、その影響なのか、絵付けが全く施されていません⑹。何故なら、壁に掛けるなどをして鑑賞していたことから、裏面に絵付けをする必要が無かったと考えられている為です。本作品だけでなく、柿右衛門様式の作品は、裏面に絵付けを施していないことが多いです。
伊-508③
 以上のことを踏まえて、私なりの解釈を加えて考えていこうと思います。
 モチーフに着目してみると、一見、竹虎文様と牡丹文様を組み合わせただけに見えます。しかし、1つの大きな流れとなる構図を踏まえて考えてみると、牡丹の美しさに思わず見取れてしまう虎の恋心を表現した姿、逆に、その美しさに嫉妬している虎の様子、あるいは、恐ろしい自分の姿と比べ、牡丹に羨望している虎の様子などにも捉えることが出来、これらから、この虎がオスなのかメスなのか、牡丹と虎の関係性は何なのかなど想像力を刺激してくれるような作品となっています。
 今回は、「色絵 竹虎牡丹文 皿」について紹介しましたが、自分の目で見てみることで、様々な作品の魅力に気づき、自分なりの解釈から、作品そのものの理解を深めていくことが出来ます。
 これから、うだるような夏の暑さが始まります。「古伊万里唐草―暮らしのうつわ―展」へお越し頂き、今回紹介しました「色絵 竹虎牡丹文 皿」のみずみずしい上絵付けの発色と共に、陶磁器の爽やかな絵付けに涼んでみませんか。





実習中、おふたりとも熱心に取り組んでくださいました。
慣れない環境のなか、積極的に業務にあたってくださり、職員一同とても助かりました。
ありがとうございました。
(小西)