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2019/08/11

博物館実習報告②

 皆様こんにちは。国士舘大学の轟と申します。私は、大学で東洋史を専攻しており卒論で清代の宝物について執筆しようと思っている事から、戸栗美術館での博物館実習を希望させて頂きました。
 実習で苦戦したことは3つあります。1つ目は、キャプションの作成です。このキャプション作成は、25文字×12行の300文字から構成されており、その中で自分が一番作品で伝えたいことをよりお客様に分かりやすく伝えるということが非常に難しく大変でした。300文字と聞くと文字数が多いと最初は感じるかもしれませんが、作品を伝えていこうとするとこの文字数では足りず、いかに300文字で収めるのか、伝えきるのか、日本語の大切さを学びました。2つ目は作品をテグスと小鋲で固定する作業です。実習では実習用のうつわを使用しましたが、損傷させないように慎重に慎重を重ねて作業を行いました。テグスを結び作品を展示して、またしまう作業を1つするだけでもかなりの時間がかかるのを学芸員さん達は毎展示100作品くらい扱うのですごいなと驚愕しました。3つ目はこのブログの作成です。作品紹介の作品をよく観賞し細部まで目を凝らしてみること、その作品について本などの参考文献を調べることを短時間でこなすことが大変でした。6日間、業務と並行して実習を指導してくださり、ありがとうございました。
 では、ここからは作品紹介をさせて頂きたいと思います。私が紹介する作品は、「染付 網目文 手鉢」と「染付 網目文 皿」です。
 1つ目の「染付 網目文 手鉢」は江戸時代の18世紀後半に作られたものと思われます。この作品のちょっとした見どころは持ち手の部分に2ヶ所花形の穴が開いていることと、4つの足がついているところです。
手鉢の作り方は板作りと考えられます。長板4枚と短板4枚を貼り合わせ、底と持ち手を別付けし、その後底に足をつけていると推測できます。これは、角の内面が比較的鋭角であること、継ぎ目、持ち手の接合部分、底、足をご覧いただけると、ご確認いただけると思います。

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「染付 網目文 手鉢」 伊万里 江戸時代(18世紀後半)

手鉢は料理を盛り付けるのに、また水を張って盃洗として使用されたと思われます。歌川豊国「喜怒哀楽之内 樂(源氏絵)」(東京都立中央図書館所蔵)から手鉢が盃洗として使用されていたことが分かります。
手鉢の網目は持ち手も内側外側もなるべくくっつけて規則正しいように網目文が描かれていますが、1ヶ所、網目を調整して描いた箇所があると思われます。それは、作品を正面から見たときに持ち手がない方の縁部分です。その部分だけ網目が付け足しされ、呉須が濃くなっています。手描きであることの、絵付けの労が忍ばれます。

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「染付 網目文 手鉢」伊万里 江戸時代(18世紀後半)

 2つ目の「染付 網目文 皿」は江戸時代の19世紀に作られたものと思われます。この作品の見どころは、表面が目の回るような網目文になっているところです。この作品の網目文は、高台内を除く表裏に描かれていますが、3つほどの描き方の異なる線があります。まず見込中央を白く残し、そこから口縁に広がる最初、ヒマワリの種を細長くしたような線、次にジグザグの線、そこから徐々に滑らかな波線になる線を組み合わせて、網目文が描かれています。また、裏面に続く網目文は表の網目文とは繋がっておらず、別々で描かれたことが、大皿の縁を観察することでわかります。

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「染付 網目文 皿」 伊万里 江戸時代(19世紀)

このように、網目文でも様々な描き方があることが2つの作品から分かると思います。そして、文様は同じ種類でも決して同一ではなく、1つ1つに特徴があり、絵付けの難しさを感じることができます。

今回紹介した作品は『青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―』で展示されています。この展覧会では、網目文の他に、蛸唐草文、雪輪など様々な文様の作品が展示されています。また、青色の作品中心に展示されていますが、青は青でも藍色、緑色に近い青、そして色々な濃淡で作品が描かれています。江戸時代の風情や暮らし、職人の技術、身近なところで使用されていたやきもの、作品の美しさに触れることができる展示になっています。是非一度ご来館いただき、実物を鑑賞されてみては如何でしょうか。