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2018/08/05

博物館実習報告①

みなさま、こんにちは。
戸栗美術館では今年も3名の博物館実習生を迎え、先日、無事に全日程を終えました。
実習中は、学芸業務やお客様対応、広報業務など多岐にわたる活動をしていただきました。
数ある学芸員の業務の中でも、作品の魅力を伝えることは、重要な仕事です。
そこで今回のブログでは、実習生のみなさんに『古伊万里植物図鑑展』の出展品の中から、お気に入りの作品の魅力を紹介していただきます。

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実践女子大学の清水と申します。戸栗美術館での実習を通して、多くのことを学ばせていただきました。その中でも、作品の安全を保つためにテグスを張って留める作業が印象に残っています。作品のすぐ近くで手を動かすため、緊張しながらもテグスを張り終え、作品保護のむずかしさと重要性を理解するとても貴重な体験をすることができました。

私が紹介する作品は、17世紀中期に作られた「色絵 葡萄文 葉形皿」です。第一展示室に展示されており、型に押し当てて成形された葉形の変形皿です。本展覧会ではこのうちの2客を展示しております。本作の大きな特徴は、うつわの薄さ、輪郭線を持たないみずみずしい葡萄の文様が合わさることによって見せる繊細さだと思います。それでは以下、4つの観点から作品を細かく見てみましょう。

葡萄4
「色絵 葡萄文 葉形皿」伊万里 江戸時代(17世紀中期) 全体

①形・薄さ
形に注目すると、扇のように広がった器形に、緩やかな葉縁の切れ込みがあります。丸みを帯びているため、愛らしさも感じさせます。そして、本作は非常に薄く、相当な技術力を注いで作られたものであることがわかるのです。

葡萄1
正面

葡萄2
側面

②貫入・陽刻の結び紐
さらに作品をよく見ると、貫入と陽刻の結び紐に気が付きます。やきものの見どころの一つである貫入は、本作にも細やかに薄く表れています。それはまるで、葉の葉脈の質感を表しているかのようです。葉縁が大きく二つに切り込まれた下部近くに浮かぶのは、熨斗(のし)とも見える結び紐です。風に揺らぐように横へ流れ、主張しすぎない陽刻が、器の薄さと調和を見せます。

葡萄8
貫入

葡萄7
結び紐

③葡萄の配置
葡萄の上絵は、葉や実の大きさ、蔓のうねり方が一枚一枚で絶妙に異なっています。全体画像上段の作品は、3枚の小さな葉が右上から左下へ流れます。画像下段の作品は中くらいの葉が2枚、右下から左上中央へ流れます。この2種類の色絵の配置はバランスの良さを感じさせます。

④輪郭線を持たない葡萄・縁銹
澄んだ白磁に、主要のモティーフである葡萄が、輪郭線を持たず艶やかに施されています。伊万里焼は基本的に文様を輪郭線で縁取りますが、本作のように輪郭線を持たないものもあります。塗りつぶされた葡萄は、まるで影や切り絵のように繋がる一体感を示すようです。口縁に施された渋みのある縁銹が、器を引き締めています。

葡萄9
葡萄・縁銹

白磁の器面に葡萄のみが配される本作からは一見、素朴で落ち着いた印象を受けます。しかし、皿の一枚一枚には繊細で丁寧な技が施されているのです。シンプルな葉形皿の中に上記の4つの要素が詰まっていることで、本作の素朴なあたたかさと繊細さを兼ね備えた美しさが成り立っていると感じました。その中でもやはりうつわの薄さ、輪郭線を持たない滑らかな葡萄の文様は本作ならではの特徴といえます。
現在開催中の『古伊万里植物図鑑展』では、日本初の彩色植物図鑑『本草図譜』とともに、植物の形や描かれ方、意味を知って楽しむことができます。伊万里焼の文様や形は何を表し、伝えたかったのか、想像しながら図鑑をめくるようにご自由にご鑑賞いただき、お気に入りの一作を探してみてください。ぜひ実物をご覧になり、皆さまが感じたこと、新しく発見した魅力を味わっていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(実践女子大学 清水)