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2018/08/05

博物館実習報告③

 八洲学園大学・吉川です。博物館実習生として戸栗美術館にお世話になりました。先日、実習の一環として、美術館の受付業務を体験させていただきました。私自身、博物館や美術館が好きで様々な館にお邪魔するのですが、受付のカウンターの内側から来館されるお客様の応対をするというのは、とても新鮮な気持ちでした。ブログの趣旨からちょっと話題が逸れてしまいますが、受付で拝見していると、戸栗美術館にいらっしゃるお客様には、東京都内を中心とした美術館・博物館等の共通入場券・割引券である「ぐるっとパス」(https://www.rekibun.or.jp/grutto/)を利用して、近隣の美術館とあわせて周遊される方が多いようです。かなりお得ですので、今度私も使ってみたいと思います。

 さて、突然ですが、皆さんはどんな花がお好きですか? 梅、桜、向日葵、紫陽花、金木犀、椿などなど、日本には季節ごとに様々な美しい花が咲きますね。なかでも初夏を代表する花と言えば藤でしょうか。実は藤は日本原産種。古来観賞用として、またその蔓や樹皮は細工用として、人々に親しまれてきました。江戸時代には各地に藤の名所が生まれ、当時の錦絵には藤の花見を楽しむ人々が描かれています。現代にも続く名所のひとつ亀戸天神社(江東区)は、藤まつりで有名ですね。

亀戸の藤1_tr
歌川国貞「亀戸藤の景(部分)」(国立国会図書館所蔵)

 さて、現在戸栗美術館で開催されているのは『古伊万里植物図鑑展』。四季折々の植物をモチーフにした伊万里焼の逸品が展示されていますが、今回の展示の中から私が特にお薦めしたいのはこちらの「瑠璃釉金銀彩 藤花文 三足香炉」です。高さ7.0cm、口径3.2cmという可愛らしい外見ながら、大変優美で気品のある作品だと思います。

三足香炉①
「瑠璃釉金銀彩 藤花文 三足香炉」伊万里 江戸時代(17世紀後半)

三足香炉④

 見どころは、器の全体に施された瑠璃釉(るりゆう)の深いブルーと、その上に金彩・銀彩で端正に描かれた藤の蔓と花房の組み合わせです。銀彩で描かれた花房は時間の経過により黒ずんでしまっていますが、それも却って落ち着いた感じを出していて、藤の花らしい風情が表われているのではないでしょうか。

三足香炉⑧

 敢えて透明釉を掛け分けたつまみ部分の白色と、蓋の縁だけに塗られた赤色が、ちょうどよいアクセントになっていますね。特にこの口縁の赤がなければ、ずいぶん単調な雰囲気になってしまっていたのではないかと思います。

三足香炉⑦トリミング画像

 蓋の裏面に焦げ跡があるところを見ると、やはり実際に香炉として使用されていたようです。江戸時代には、どんな立場の人が、どんな場所でこの作品を使っていたのでしょうか……。生活から遊離した観賞用の美術品ではなく、実際に人々の暮らしの中で使われていたという点も伊万里焼の魅力のひとつです。何百年も前の誰かが大事にしていた品物が、今こうして私たちの目の前にあるというのは不思議な気がしませんか? 藤の蔓のように、過去から現代にまで長く長く縁がつながっているような。

 展覧会では他にも松竹梅や菊、蘭など、私たちに馴染み深い植物を形や文様として取り入れた作品が、それぞれの吉祥としての意味や、江戸時代の人々の暮らしへの受容のされ方などとともに紹介されています。伊万里焼の美しさを楽しむだけでなく、日本人と四季の植物との関わり方についても改めて考えてみる良い機会になるのではないでしょうか。『古伊万里植物図鑑展』は9月22日(土)まで開催しています。皆さん、どうぞ戸栗美術館にお越しください。

(八洲学園大学 吉川)

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以上、3記事にわたり博物館実習報告として、実習生による作品紹介をさせていただきました。
やきものを紹介するのは初めてのことだったと思いますが、各々自分の言葉でしっかりと作品の魅力を書き上げることができました。
今回の博物館実習ではこの他に、作品のキャプションも制作しております。
キャプションは次回展覧会『鍋島と古九谷-意匠の系譜-展』期間中(10月5日~12月22日)、第三展示室にて展示いたしますので、是非、ご覧ください。

実習生のみなさんには慣れない環境のなか、熱心に業務に取り組んでいただき、職員一同大変助かりました。
実習生のみなさん、ありがとうございました。

(学芸員 青砥)