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2019/07/13

中学生職場体験学習

まだまだ半袖で過ごすには肌寒い日が続いています。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、戸栗美術館では7月9日~12日の4日間、中学生の職場体験学習を受け入れました。今回は松濤中学校から実習生をお迎えし、作品に関する調査や、作品についての紹介文の執筆をはじめ、館内の様々な業務を体験していただきました。
元々絵を描くことが好きで、美術館に興味があったという今回の実習生。調べ学習では学芸員の話に熱心に耳を傾け、積極的に取り組んでくださいました。
他にも、受付業務や広報発送作業など、お客様の時には見えない裏方の仕事などを体験し、学芸員の仕事が多岐にわたることも知っていただけたことと思います。今回の職場体験学習を通して、美術館に一層興味を持っていただけましたら幸いです。

それでは、現在開催中の『青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―』出展品の中から、実習生によるおすすめ作品を以下にご紹介していただきます。是非、ご覧くださいませ。

伊-936B①
伊万里 江戸時代(18世紀末~19世紀初) 口径19.5cm×10.9cm

 職場体験で4日間お世話になりました、松濤中学校2年高藤です。
 私にとってこの4日間はとても充実したものでした。皆さんが明るく出迎えてくれて、楽しくわかりやすく教えてくださりました。職場体験先が戸栗美術館で本当に良かったです。
 私が一番印象に残った伊万里焼の作品は、「染付 白鷺文 長皿」です。この作品を選んだ理由は、三羽共首の向きや羽の広げ方が異なっている所や、配置がとても興味深かったからです。二羽の白鷺は上を向いているけれど、残りの白鷺は下を向いていたり、一羽は長い首をS字状に曲げたりしている特徴的な作品です。
 他にもこの作品の良さがあります。それは染付ならではの青と白の使い方です。この長皿の周りには雲があり、とても濃い青色で描かれています。それとは対象的に白色で皿一面に大きく描かれている三羽の白鷺。他の似ている作品と比べてみると、この作品は白鷺に目が行く作品だということが分かりました。
さらによく見てみると、側面に山が描かれていることから、山の上の雲の中で三羽の白鷺がおもいおもいに飛んでいる様子も想像できる素晴らしい作品だということも分かりました。
伊-936B②

 そして、同時に二つの疑問が浮かびました。一つ目は皿の四つ角がへこんでいるのはどのような意味があるのか。もう一つはなぜこのような白鷺の配置にしたのかということです。二つの疑問を解決するために調べていくと、江戸時代後期からは糸切り成形による長皿が多くなっていき、糸切り成形の時使う型にあらかじめ細工をしておくことによって、このような四つ角ができるそうです。この四つ角には隅入(すみいり)という名称もありました。次に分かったことは、白鷺というのは日本であまり文様とされていなかったようですが、十四世紀頃の中国でよくつかわれており、中国磁器の影響をうけ、十七世紀頃初頭に誕生した伊万里焼では初期から取り入れられるようになるそうです。この頃から複数羽の白鷺が描かれる場合の顔の方向は違う向きでした。この「染付 白鷺文 長皿」が作られたのは十八世紀末~十九世紀初頭頃ですが、百年以上前の複数羽白鷺が描かれている作品と比べてみると変わった所もありました。首を違う方向に描くのは変わりませんが、昔より大胆な白鷺の見せ方や配置のずらし方。定番から離れた自由な作品が、時代が進むにつれて増えていくことが分かりました。伊万里焼の技術が上がっていくのを感じました。
 他の作品と見比べたり調べたりすることで、この作品の良さが初めて見たときよりもさらに分かりました。疑問を解決することで見えてくる良さもありました。もっと様々な作品を見て色々な疑問を見つけ、理解を深めていこうと思います。


慣れない環境のなか、積極的に業務にあたってくださり、職員一同とても助かりました。
実習最終日には「当館で実習ができて良かった」というお声を聞くことができ、何より嬉しく感じます。
4日間、ありがとうございました。

(学芸員 上田)
2019/02/08

中学生職場体験

暦の上では春は立ちながら、厳しい寒さが続いております。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、戸栗美術館では2月5日~8日までの4日間、中学生の職場体験学習を受け入れました。
今回は渋谷区立広尾中学校から2名をお迎えし、美術館の様々な業務を体験していただきました。
お二人とも積極的で、テキパキと業務に取り組んで下さり、職員一同、大変助かりました。
作品保護に関わる桐箱の結び方やキャプションの作成をはじめとした美術館ならではの仕事から、受付や広報業務といった様々な仕事を体験し、美術館の業務が多岐に渡ることを知っていただけたことと思います。
そうした数ある業務のなかでも、作品の魅力を伝えるのは学芸員の重要な仕事のひとつです。
お二人とも自分で作品の魅力を見つけ、自分の言葉でしっかりと書き上げることができました。
今回の職場体験学習を通して、やきものや美術館に一層興味を持っていただけましたら幸いです。

それでは、『初期伊万里-大陸への憧憬-展』出展品の中から、各々お気に入りの作品を以下にご紹介していただきます。是非、ご覧くださいませ。

白兎文
職場体験で4日間お世話になりました、広尾中学校2年の森嶋諒佳です。
私が職場体験で一番難しかったことは、文を作るのが苦手なのでブログ作成です。でも、学芸員の皆様がアドバイスをくださったお陰で、完成出来ました。他の仕事も全部楽しかったです。
私が一番印象に残った伊万里焼は、「染付 吹墨白兎文 皿」です。私がこれを選んだ理由は、小さいモチーフを3つ描いただけの素朴なうつわですが、吹墨によって文様の存在感を感じたからです。
この作品の吹墨は、うつわに型を置いて呉須を吹き付け、上から線描きをしています。吹墨をせずに、ただ兎や雲を描いただけでは、真っ白な部分が多いのであまり目立ちません。しかし吹墨をする事により、兎や雲が際立ちます。
輪郭線は、吹墨部分と文様の区切りがはっきり分かるように描かれています。中でも兎の眼の色が濃いので、私は最初に兎に目が行きました。
日本の磁器には、中国の磁器への憧れがあらわれています。この作品に描かれている、兎、雲、短冊の組み合わせ、吹墨という技法も中国からの影響でしょう。その兎ですが中国の磁器に描かれる兎は凛々しく迫力があるのですが、初期伊万里の兎は、とても可愛らしく愛着がわきました。
他の国への憧れから、技法を取り入れたり、独自の文様の表情が新たに生まれたりして、後世へ残されていくのだな、と陶工の努力を感じました。



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「染付 楼閣山水文 芋頭水指」
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「青花 楼閣山水文 水指」
今回4日間、職場体験でお世話になりました。渋谷区立広尾中学校2学年貝吹昌起です。美術館の仕事は、とてもたいへんでしたがやりがいがあり、楽しかったです。わからないところもあったけどみんな優しく教えてくれました。とても、楽しい4日間でした。
今回の展示を見て一番印象に残った作品は「染付 楼閣山水文 芋頭水指」です。この作品は、江戸時代17世紀中期に作られた作品で、口径10.8㎝、高さ17.8㎝です。文様は、水の上に橋があり、その上に人物が二人、その横には建物があります。
実は、この作品は中国の古染付の「青花 楼閣山水文 水指」とよく似ています。特に、文様がとてもよく似ています。胴部に描かれた橋や人物、建物の配置が鏡写しになっており、また、口縁を線で切って帯を作るところも似ています。
しかし、全てが似ているわけではないのです。例えば、文様は「青花 楼閣山水文 水指」よりも「染付 楼閣山水文 芋頭水指」の方が建物や人物がはっきり描かれています。また、中国の古染付に見られる虫喰(胎土と釉薬の収縮率が大きく異なる為に釉薬が剥がれて露胎となった部分)は、普通の作品にとってマイナスになります。それをあえて口縁にあらわしており、そこまで似せている点がすごいと思いました。
僕は、「染付 楼閣山水文 芋頭水指」の依頼人は、「青花 楼閣山水文 水指」のような中国の磁器に憧れをもっていたんだな、と思います。僕もこのような尊敬、憧れる人、物を見つけていきたいです。

2018/11/30

中学生職場体験学習

秋も一段と深まり、朝夕は寒さが身にしみる時節となりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、戸栗美術館では11月26日~30日までの5日間、中学生の職場体験学習を受け入れました。
今回は渋谷区立代々木中学校から2名をお迎えし、美術館の様々な業務を体験していただきました。
慣れない環境で緊張するなか、お二人ともしっかりと業務に取り組んでくださいました。
受付や桐箱の結び方、キャプションの製作をはじめ、お客様には見えない様々な裏方の仕事を体験し、美術館での仕事が多岐に渡ることを知っていただけたことと思います。
なかでも、学芸員の重要な仕事のひとつである作品紹介では、自分で作品の魅力を見つけ、それぞれ興味のある作品を選ぶことができました。
今回の職場体験学習を通して、美術館に一層興味を持っていただけましたら幸いです。

それでは、開催中の『鍋島と古九谷-意匠の系譜-展』出展品の中から、各々お気に入りの作品を以下にご紹介していただきます。是非、ご覧くださいませ。



代々木中学校の佐藤幹高です。僕は5日間、戸栗美術館で職業体験させていただきました。作品カードから学芸員の仕事を細かく教えてくださいました。僕が職業体験する前は美術館の仕事も学芸員という名前も知りませんでしたが、ひとつひとつ丁寧に教えていただき、学芸員の仕事は自分が思ってたより多く大変でした。

牡丹文
僕が選んだ作品は江戸時代の18世紀前半に作られた「染付 牡丹文 皿」という鍋島焼のお皿です。この作品の色遣いは、白色と青色のみで、僕はシンプルで整った物が好きなのでこの作品を選びました。
見込には大きく描かれた満開の牡丹もあり、まだ牡丹が花開いてない蕾もあります。牡丹の花に注目すると、花びらの縁は中心より白くなっています。また、しっかりと牡丹の花びらの柔らかさが描かれており、とても写実的です。
牡丹の葉も表は濃く描かれていますが、所々に見える葉の裏側は、少し表より薄く描かれています。この塗りつぶす技法を濃(だみ)といい、青色の濃淡を駆使した本作を作るには職人の高い技術が必要です。
そして、作品の裏を見てみると、表の写実的な牡丹に対して、裏は細い茎に小さな葉、大きな牡丹があって、デザイン化されています。ただし、裏面に書かれている牡丹も表のように、少し中心が濃く外側は少し薄くなっています。デザイン化しても濃によるグラデーションが、牡丹の花の雰囲気を残しています。
裏(牡丹文)
表面より描きにくそうな裏面一面にも文様が描かれていて、とても手が込んでるように見えます。この作品の横に鏡があるので裏面も是非見てみてください。




代々木中学校の宮内智樹です。僕は5日間戸栗美術館で職場体験をさせてもらいました。最初は楽だと思っていましたが、やってみるととても大変でした。伊万里焼についての勉強や、受付の仕事など色々なことを体験しました。この体験を通して学芸員が大変な仕事だと知りました。この経験を今後に生かしていきたいと思います。今回は5日間で調べた伊万里焼の作品を紹介します。

石畳文   石畳文裏
今回一番印象に残ったのは「色絵 石畳文 皿」です。17世紀中期に作られた古九谷様式の作品で、色鮮やかなのが特徴。伊万里焼は白や青のイメージだったため、この作品を見て驚きました。
この作品には二つの魅力があります。ひとつは見込の模様。黄色と黒色の二色の色遣いが印象的です。あえて石畳文の線を真っすぐに引いてないことで、人によって文様の見え方が違います。僕には田んぼに見えましたが、顔に見えるという人もいます。そういうことを考えながら見ると、普通に見るのとはまた違った面白さがあります。
ふたつ目の魅力は裏側です。見込の文様がインパクトがあるため、裏は注目されにくいですが、実は文様があります。全体が黄色で塗りつぶされていて、そこに、細かな菊唐草が描かれています。見込の大胆な文様と、裏の繊細な模様がひとつの作品にあらわされていて面白いです。
伊万里焼はただ見るだけではなく、細かいところまでよく見ると、新たな発見があります。作品を見るときそういった所も注目してみてください。
2018/11/30

渋谷東急本店『元祖むかし昔の食器展』を拝見いたしました。

みなさま、こんにちは。
東京でもやっと木々が色づきはじめました。
当館のお庭の紅葉も日ごとに赤く染まり、そろそろ見頃を迎えそうです。

さて、そのような秋深まる11月29日(木)より、渋谷・東急本店8階、美術ギャラリーにて『元祖むかし昔の食器展』が開催されています。
こちらは、古美術商の前坂晴天堂が主催の展示。
実は店主の前坂規之氏には先日当館のアートサークル会員様限定イベントにてご講演をいただいたばかりです。
(当館で開催されたイベントについてはこちらをご覧ください)

当館ともご縁のある前坂氏が手がける今展では、【食器】がテーマ。
特に江戸時代に作られた伊万里焼、古伊万里を中心に、昔に食器として作られたやきものがずらりと並んでいます。
器種も豊富に取り揃えられており、長皿や豆皿、蓋付碗や大鉢など様々です。
さらに、古伊万里だけでなく、瀬戸焼や京焼など他産地の個性豊かなうつわも。
どんなうつわを組み合わせようか、どんなお料理を盛り付けようかなど、わくわくしながら楽しめる展示です。

また、会場の東急本店は当館から歩いて5分程度。
この季節には道中色づいた街路樹のコブシや鮮やかに咲く山茶花もお楽しみいただけます。
秋のお散歩とともに、食卓を彩るうつわを探しに出かけてみてはいかがでしょう。


『元祖むかし昔の食器展』
渋谷 東急本店 8階美術ギャラリー
(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)

~12月12日(水)
午前10時~午後7時
最終日は午後17時閉場

元祖むかし昔の食器展


(学芸員 小西)
2018/10/08

『鍋島と古九谷-意匠の系譜-展』開催のご案内

吹く風も涼しくなってきました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

10月5日(金)より『鍋島と古九谷-意匠の系譜-展』を開催しております。

鍋島と古九谷展ポスター

鍋島焼と古九谷様式をはじめとした17世紀中期の伊万里焼の関係に注目した展覧会です。
当館では過去にも、鍋島焼展を開催してまいりましたが、こうしたテーマでの展示は今回が初めて。

今展では、変形小皿や高足の皿、猪口、中・大皿といった器種別に鍋島焼と伊万里焼を展示しています。
特に、変形小皿類は今展の見どころのひとつです。
17世紀中期の伊万里焼と17世紀後半の前期鍋島では手の込んだ良質な変形小皿が作られていました。
それらは、年代が重なることや当時の鍋島藩窯についての史料が少ないことから伊万里焼と鍋島焼の分類が難しい一群です。
色、形ともに目に楽しい変形小皿の数々から、伊万里焼の技術を元として、徐々に鍋島焼が確立されていく過程をご覧ください。

鍋島と古九谷展1 鍋島と古九谷展2

また、中・大皿類では意匠面での繋がりに注目。
鍋島焼の構図を見ると、同様の構図を伊万里焼にも見つけることができ、鍋島焼が伊万里焼から引き継いだ意匠を駆使しながら、独自の展開を遂げている様子がうかがえます。

鍋島と古九谷展3 鍋島と古九谷展4

鍋島焼の誕生には17世紀中期の伊万里焼が深く関わっていることを双方の作品を通して、ご覧いただける『鍋島と古九谷-意匠の系譜-展』は12月22日(土)まで開催しております。

また、今展に併せ、一階やきもの展示室では『鍋島焼が江戸に届けられるまで』を開催中です。
完成した鍋島焼が江戸幕府の中枢に届けられるまでの道のりをパネルでご紹介しております。

この他、第三展示室では『磁器誕生から100年の変遷』、特別展示室では『伊万里焼ができるまで』『鍋島焼ができるまで』がそれぞれ開催中です。
どちらの展示室も前回展と一部内容を変更しておりますので、こちらも併せてご覧下さい。

今展も皆様のご来館を心よりお待ち申し上げております。


(学芸員 青砥)