FC2ブログ
2018/08/09

『やきもの展示解説入門編』を開催しております

今年の夏は厳しい残暑が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

戸栗美術館では、『やきもの展示解説入門編』を開催しております。

2018入門編1 2018入門編2

「やきものに興味はあるけれど、あまり詳しくない、敷居が高そう」とお思いの初心者の方に向けたイベントです。

やきものの種類や陶器と磁器の見分け方といった基本から
伊万里焼の作り方や歴史など、やきもの鑑賞をより楽しめるポイントを学芸員がレクチャーいたします。

また、イベントでは、江戸時代のやきもののかけら(陶片)をお手に取ってご覧いただけるコーナーも。
実際に触れることで、見た目では分からない重みや質感を感じられます。

レクチャー後は、現在開催中の『古伊万里植物図鑑展』を学芸員がご案内。

開催概要は下記をご覧ください。

期間:8月10日(金)~8月12日(日)
時間:各日午後2時~(所要時間 約60分)
場所:戸栗美術館1階ラウンジ
参加費:無料(入館料はお支払いください)
    ※期間中、小中学生は入館料無料
参加方法:予約不要。時間に合わせて開催場所にお集まりください

入門編冊子2018

ご参加の方に、やきものの基本がわかる当館特製パンフレットをプレゼントいたします。

どうぞお気軽にご参加ください。

(学芸員 青砥)
2018/08/05

博物館実習報告③

 八洲学園大学・吉川です。博物館実習生として戸栗美術館にお世話になりました。先日、実習の一環として、美術館の受付業務を体験させていただきました。私自身、博物館や美術館が好きで様々な館にお邪魔するのですが、受付のカウンターの内側から来館されるお客様の応対をするというのは、とても新鮮な気持ちでした。ブログの趣旨からちょっと話題が逸れてしまいますが、受付で拝見していると、戸栗美術館にいらっしゃるお客様には、東京都内を中心とした美術館・博物館等の共通入場券・割引券である「ぐるっとパス」(https://www.rekibun.or.jp/grutto/)を利用して、近隣の美術館とあわせて周遊される方が多いようです。かなりお得ですので、今度私も使ってみたいと思います。

 さて、突然ですが、皆さんはどんな花がお好きですか? 梅、桜、向日葵、紫陽花、金木犀、椿などなど、日本には季節ごとに様々な美しい花が咲きますね。なかでも初夏を代表する花と言えば藤でしょうか。実は藤は日本原産種。古来観賞用として、またその蔓や樹皮は細工用として、人々に親しまれてきました。江戸時代には各地に藤の名所が生まれ、当時の錦絵には藤の花見を楽しむ人々が描かれています。現代にも続く名所のひとつ亀戸天神社(江東区)は、藤まつりで有名ですね。

亀戸の藤1_tr
歌川国貞「亀戸藤の景(部分)」(国立国会図書館所蔵)

 さて、現在戸栗美術館で開催されているのは『古伊万里植物図鑑展』。四季折々の植物をモチーフにした伊万里焼の逸品が展示されていますが、今回の展示の中から私が特にお薦めしたいのはこちらの「瑠璃釉金銀彩 藤花文 三足香炉」です。高さ7.0cm、口径3.2cmという可愛らしい外見ながら、大変優美で気品のある作品だと思います。

三足香炉①
「瑠璃釉金銀彩 藤花文 三足香炉」伊万里 江戸時代(17世紀後半)

三足香炉④

 見どころは、器の全体に施された瑠璃釉(るりゆう)の深いブルーと、その上に金彩・銀彩で端正に描かれた藤の蔓と花房の組み合わせです。銀彩で描かれた花房は時間の経過により黒ずんでしまっていますが、それも却って落ち着いた感じを出していて、藤の花らしい風情が表われているのではないでしょうか。

三足香炉⑧

 敢えて透明釉を掛け分けたつまみ部分の白色と、蓋の縁だけに塗られた赤色が、ちょうどよいアクセントになっていますね。特にこの口縁の赤がなければ、ずいぶん単調な雰囲気になってしまっていたのではないかと思います。

三足香炉⑦トリミング画像

 蓋の裏面に焦げ跡があるところを見ると、やはり実際に香炉として使用されていたようです。江戸時代には、どんな立場の人が、どんな場所でこの作品を使っていたのでしょうか……。生活から遊離した観賞用の美術品ではなく、実際に人々の暮らしの中で使われていたという点も伊万里焼の魅力のひとつです。何百年も前の誰かが大事にしていた品物が、今こうして私たちの目の前にあるというのは不思議な気がしませんか? 藤の蔓のように、過去から現代にまで長く長く縁がつながっているような。

 展覧会では他にも松竹梅や菊、蘭など、私たちに馴染み深い植物を形や文様として取り入れた作品が、それぞれの吉祥としての意味や、江戸時代の人々の暮らしへの受容のされ方などとともに紹介されています。伊万里焼の美しさを楽しむだけでなく、日本人と四季の植物との関わり方についても改めて考えてみる良い機会になるのではないでしょうか。『古伊万里植物図鑑展』は9月22日(土)まで開催しています。皆さん、どうぞ戸栗美術館にお越しください。

(八洲学園大学 吉川)

**********

以上、3記事にわたり博物館実習報告として、実習生による作品紹介をさせていただきました。
やきものを紹介するのは初めてのことだったと思いますが、各々自分の言葉でしっかりと作品の魅力を書き上げることができました。
今回の博物館実習ではこの他に、作品のキャプションも制作しております。
キャプションは次回展覧会『鍋島と古九谷-意匠の系譜-展』期間中(10月5日~12月22日)、第三展示室にて展示いたしますので、是非、ご覧ください。

実習生のみなさんには慣れない環境のなか、熱心に業務に取り組んでいただき、職員一同大変助かりました。
実習生のみなさん、ありがとうございました。

(学芸員 青砥)
2018/08/05

博物館実習報告②

東京工芸大学の福田です。博物館実習生として6日間、戸栗美術館にお世話になりました。私は普段大学でデザインを学んでいるので、陶磁器に関してあまり知識のないまま実習に臨んだのですが、美術館の方々はとても優しく丁寧に教えてくださりました。中でも、教育普及活動についてのお話が印象的で、どうすれば子どもたちに来てもらえるか、若い世代に興味を持ってもらえるかなど日々考えていらっしゃるのを知って、初めて来館してくださるお客様にも楽しんでもらえるような美術館作りが必要なのだと感じました。

私は「青磁 瓢形瓶」と「瑠璃釉 瓢形瓶」の2つを選びました。
まず始めに「青磁 瓢形瓶」をご紹介します。この作品は江戸時代の18世紀に作られたものです。青磁の釉薬のツルンとした質感と瓢箪の器形の丸みが印象的ですね。私はこの質感とフォルムが好きです。釉薬とは素地の上から掛けられるガラス質の膜のことで、様々な陶磁器に使用されており、光が当たると艶感が出て美しさが際立ちます。本作に掛けられている釉薬は深みのある緑色をしていて、まさに瓢箪の実をイメージできるでしょう。瓢箪の形はただ丸いだけではなく、中央部にくびれがあることで、存在感の強さに加えメリハリを感じることができます。
「シンプルで美しい」というのはモノを作る上で究極的な考え方であると思っているのですが、この作品はその考え方をあらわしているように見えます。

青磁1 「青磁 瓢形瓶」伊万里 江戸時代(18世紀)

次に「瑠璃釉 瓢形瓶」をご紹介します。江戸時代の17世紀中期に作られた作品で、瑠璃釉を掛ける前に堆線(白泥を盛り上げてあらわした線)がひねったように見えるよう、あらわされていることで、下から上に向かって立ち上っていくような躍動感を感じるとともに、瓢箪の形に変化を与えています。

瑠璃2

上から見るとひねったようにあらわされていることがよく分かりますね。私はこの作品を初めて見たとき、この堆線がどれくらい盛り上がっているのか触ってみたくなったのですが、皆さんはいかがですか?

瑠璃1 「瑠璃釉 瓢形瓶」伊万里 江戸時代(17世紀中期)

このように同じ瓢箪をモチーフにした作品でもそれぞれに個性があり、また、同じ伊万里焼でも、シンプルに釉薬を掛けただけのものから、絵付けを施されたものまで様々あります。
今回ご紹介した作品は展示室内に隣り合わせで並んでいます。2つの釉薬の色やちょっとしたカタチの違いを見比べてみるのも面白く鑑賞できるポイントになりそうです。
私は質感とフォルムに注目してみましたが、他にも注目できる点があると思います。
ぜひ実際にご鑑賞いただき、面白いポイントを見つけてみていただけたらと思います。

(東京工芸大学 福田)
2018/08/05

博物館実習報告①

みなさま、こんにちは。
戸栗美術館では今年も3名の博物館実習生を迎え、先日、無事に全日程を終えました。
実習中は、学芸業務やお客様対応、広報業務など多岐にわたる活動をしていただきました。
数ある学芸員の業務の中でも、作品の魅力を伝えることは、重要な仕事です。
そこで今回のブログでは、実習生のみなさんに『古伊万里植物図鑑展』の出展品の中から、お気に入りの作品の魅力を紹介していただきます。

**********

実践女子大学の清水と申します。戸栗美術館での実習を通して、多くのことを学ばせていただきました。その中でも、作品の安全を保つためにテグスを張って留める作業が印象に残っています。作品のすぐ近くで手を動かすため、緊張しながらもテグスを張り終え、作品保護のむずかしさと重要性を理解するとても貴重な体験をすることができました。

私が紹介する作品は、17世紀中期に作られた「色絵 葡萄文 葉形皿」です。第一展示室に展示されており、型に押し当てて成形された葉形の変形皿です。本展覧会ではこのうちの2客を展示しております。本作の大きな特徴は、うつわの薄さ、輪郭線を持たないみずみずしい葡萄の文様が合わさることによって見せる繊細さだと思います。それでは以下、4つの観点から作品を細かく見てみましょう。

葡萄4
「色絵 葡萄文 葉形皿」伊万里 江戸時代(17世紀中期) 全体

①形・薄さ
形に注目すると、扇のように広がった器形に、緩やかな葉縁の切れ込みがあります。丸みを帯びているため、愛らしさも感じさせます。そして、本作は非常に薄く、相当な技術力を注いで作られたものであることがわかるのです。

葡萄1
正面

葡萄2
側面

②貫入・陽刻の結び紐
さらに作品をよく見ると、貫入と陽刻の結び紐に気が付きます。やきものの見どころの一つである貫入は、本作にも細やかに薄く表れています。それはまるで、葉の葉脈の質感を表しているかのようです。葉縁が大きく二つに切り込まれた下部近くに浮かぶのは、熨斗(のし)とも見える結び紐です。風に揺らぐように横へ流れ、主張しすぎない陽刻が、器の薄さと調和を見せます。

葡萄8
貫入

葡萄7
結び紐

③葡萄の配置
葡萄の上絵は、葉や実の大きさ、蔓のうねり方が一枚一枚で絶妙に異なっています。全体画像上段の作品は、3枚の小さな葉が右上から左下へ流れます。画像下段の作品は中くらいの葉が2枚、右下から左上中央へ流れます。この2種類の色絵の配置はバランスの良さを感じさせます。

④輪郭線を持たない葡萄・縁銹
澄んだ白磁に、主要のモティーフである葡萄が、輪郭線を持たず艶やかに施されています。伊万里焼は基本的に文様を輪郭線で縁取りますが、本作のように輪郭線を持たないものもあります。塗りつぶされた葡萄は、まるで影や切り絵のように繋がる一体感を示すようです。口縁に施された渋みのある縁銹が、器を引き締めています。

葡萄9
葡萄・縁銹

白磁の器面に葡萄のみが配される本作からは一見、素朴で落ち着いた印象を受けます。しかし、皿の一枚一枚には繊細で丁寧な技が施されているのです。シンプルな葉形皿の中に上記の4つの要素が詰まっていることで、本作の素朴なあたたかさと繊細さを兼ね備えた美しさが成り立っていると感じました。その中でもやはりうつわの薄さ、輪郭線を持たない滑らかな葡萄の文様は本作ならではの特徴といえます。
現在開催中の『古伊万里植物図鑑展』では、日本初の彩色植物図鑑『本草図譜』とともに、植物の形や描かれ方、意味を知って楽しむことができます。伊万里焼の文様や形は何を表し、伝えたかったのか、想像しながら図鑑をめくるようにご自由にご鑑賞いただき、お気に入りの一作を探してみてください。ぜひ実物をご覧になり、皆さまが感じたこと、新しく発見した魅力を味わっていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(実践女子大学 清水)
2018/07/31

ショップ商品のご紹介

皆様、こんにちは。
戸栗美術館では『古伊万里植物図鑑展』を開催しておりますが、
展示とともにお楽しみいただきたいのが、ミュージアムショップです。
展覧会に合わせて、出展品の絵葉書を追加したり、新しく植物文様のやきものを入荷したりしております。

そんなミュージアムショップの商品の中から、今回は博物館実習にお越しいただいた学生の皆様におすすめのものをご紹介いただきます。
文章はもちろん、商品の写真もそれぞれの学生さんによる撮り下ろしです。

**********

皆様、こんにちは。実践女子大学の清水です。
今回ご紹介する商品は、中島瞳氏の金彩椿絵小皿と、染付牡丹絵小皿です。
中島氏の作品の見どころは、繊細な手描きの文様。
二品を並べると雰囲気は全く異なり、椿には愛らしさ、牡丹には涼やかな美しさがあります。

全体1

椿 拡大1

金彩椿絵小皿 6,480円(税込)
丸みのあるかわいらしい椿の花弁ひとつひとつを見ると、水玉や涼しげなストライプの文様が施され、華やかさと愛らしさを兼ね備えた小皿です。

拡大 牡丹1

染付牡丹絵小皿 5,184円(税込)
涼しげでやわらかな青磁に、大きく咲き誇る牡丹が気品あふれるさわやかな小皿。

鑑賞用として飾ったり、華やかな小皿として実用したりしてみてはいかがでしょうか。
ぜひ実物をお手に取ってご覧ください。

**********

皆様、こんにちは。東京工芸大学の福田です。
私がご紹介する商品は、たなかふみえ氏の木瓜型三足豆皿です。
たなかふみえ氏の作品の魅力は一枚一枚作家自身の手で描かれた可愛らしいタッチの文様。
全体豆皿

1月から12月まで月ごとに異なる植物文様の中で今回は7・8・9月のお皿をご紹介します。

3つ豆皿

画像左 7月 露草  1,836円(税込)
画像下 8月 朝顔  1,728円(税込)
画像右 9月 金木犀 1,620円(税込)
どれも夏らしくさわやかな印象ですね。

斜め豆皿

他にも紫陽花や椿など様々な植物文様のお皿があります。
季節に合わせて揃えるのもよいのではないでしょうか。

**********

初めまして。八洲学園大学・吉川と申します。実習生として戸栗美術館さんにお世話になりました。

さて、私からお薦めさせていただきたい商品はこちらの書籍、『きんしゃい有田豆皿紀行』、『きんしゃい有田珠玉の器紀行』(いずれもCCCメディアハウス刊)の2冊。国産磁器発祥の地である有田と、この土地で伝統的な有田焼の制作を行われている作家さんたちを紹介した書籍です。

今年5月のゴールデンウィーク期間中、私も初めて有田に旅行したのですが、本書には窯元の所在地のほか、周辺の名所などが多くの写真や地図とともに掲載されており、ガイドブックとして活用させていただきました。
……いや、むしろこの本で取り上げられている風景の美しさや作り手の人柄に惹かれて、有田に行くことを決めたという方が正しいかもしれません。それほど、この本に掲載されている写真が魅力的だったのです。もちろん、どちらの本にも優美で繊細な有田焼のうつわが多数掲載されており、きっと皆さんもお気に入りの作品を見つけられると思いますよ。

DSC06779 (ブログ用写真)

ちなみに『きんしゃい有田珠玉の器紀行』の表紙に掲載されている可愛らしい蓋碗は、有田在住の作家・たなかふみえさんによるもの。伝統的なモチーフを用いながら、とても現代的な感性でオリジナルの文様を描いた作品を制作されている方です。実は、たなかふみえさんの作品は、現在戸栗美術館1Fやきもの展示室『第5回たなかふみえ作品展』(~9月22日)とミュージアムショップでご覧いただけます!

『きんしゃい有田豆皿紀行』、『きんしゃい有田珠玉の器紀行』はどちらも1,728円(税込)です。これらの本を手に取って興味を持たれた方は、ぜひ実際に有田を訪ねてみてください。トンバイ塀(トンバイとは窯を築くときに使う耐火レンガ。不要になったトンバイを固めて作られた塀)に囲まれた静かな街並みや、清浄な雰囲気の漂う陶山神社の風情など、400年続く伝統の産地ならではの景色に出会えます。

**********

実習生の皆さん、ありがとうございました。
次回は、実習生の皆さんによる作品紹介記事を公開予定です。
どうぞお楽しみに。

(黒沢)